やまもとはると、5か月連続リリース記念特別インタビュー【前編】響き合う孤独と希望

Pocket

心に潤いを与える優しさのなかにどこか寂しさが共鳴する楽曲で魅了するシンガーソングライターやまもとはると。これまでアコースティックギターの弾き語りを中心に活動してきた彼が、今回新たな一歩を踏み出した。5か月連続で楽曲をリリースしてきた彼に、現在の想いやこれからの展望を探った。

前後編に分けたインタビュー前編の今回は、「追憶」「青の鳥」「旅の途中」の3曲を掘り下げる。

中村タイチ、上野皓平(The Songbards)、カモシタサラ(インナージャーニー)、小山田壮平とのエピソードも。様々なミュージシャンとの出会いを通して、見えてきた景色とは。

(取材・文=ツムギ、撮影=アヤネ)

5曲の連続リリースを終えて

新しい音作りで生まれた気付き

 毎月曲をリリースしていくということは、自分にとっては前向きなエネルギーが降り注ぐことだったかな。

ー5曲連続リリースおめでとうございます。今回の5曲は、中村タイチさんとタッグを組むなど、今までの曲作りとは違いましたよね。 サウンド的にも今までは弾き語りの楽曲が多かったところから、今回はサウンドアレンジされた楽曲がリリースされてきました。新たな試みだったと思いますが、いかがでしたか?

やまもと:タイチさんの大きい懐の中で自由に楽しくやらせてもらった5曲でした。例えば、最後にリリースした「エメラルド」は、3月くらいには完成してたんだけど、リリース前に俺がわがままいって。もう一度アレンジから考え直したり、ボーカルも撮り直しました。こんなことって普通はありえないんじゃないかって思うし、1日中作業したこともあるし、タイチさんにはなんでこんなに優しくしてもらえるんだろうかって思います。

やまもと:でも、歌詞を書くことにはすごく悩んで。「旅の途中」の歌詞を書いていたときは、5時間座って1行しか書けないこともありました。自分の本当に書きたいことが、その都度生まれるミュージシャンもいると思うけど、俺は自分が書きたいことに気づくまでに時間がかかるタイプかなって思います。

やまもと:俺はずっと1人で弾き語りやってきて、誰から急かされるわけでもなく曲を作ってきたから、あまり曲がいっぱい書けなくて。だからどんどん自信がなくなってしまっていたけど、5か月連続リリースは、良い意味で締め切りがあるからそういうことに背中を押された。だんだん前向きになっていって、「旅の途中」でそれまでの状態を打破できたと思う。自分は曲を書けない人間だと思い込んでいたけど、書けるんだという風に思えたのがこの曲でした。 毎月曲をリリースしていくということは、自分にとっては前向きなエネルギーが降り注ぐことだったかな。

ーリリースの順番に何か思い入れはあったのでしょうか?

やまもと: 最後の「エメラルド」はシンプルなサウンドになっているけれど、全体的には「追憶」「青の鳥」のアコースティックな感じから、どんどん楽器が入って盛り上がっていく流れを意識しました。今までずっと弾き語りの音源を出してきたから、いきなりバンドサウンドっていうよりは、自然な流れにしていきたかったかな。

前作との架け橋となった「追憶」

中村タイチとのはじめての楽曲制作

タイチさんに対してありがたいなって思う反面、 もっといい曲を書きたいなとも思いました。

ーXでやまもとさんが、「追憶」は前作の「からっぽのプール」と繋がるようにしたかったとおっしゃっていましたが、それはサウンド的な面が大きいんですね。「追憶」を初めて聞いたとき、歌詞から情景が鮮明に浮かびました。実体験が元になってできた歌詞なのではと感じました。

やまもと:この曲の情景として、部屋が舞台だとしたら俺は天井から見ているみたいなイメージで書いてました。もちろん実体験がきっかけにはなってるけど、もちろん想像も足されてる。例えば、歌詞にある「疲れて眠る君の横顔 まだ生乾きのそのまつ毛と」とかは、自分が妄想してるところが多いと思います。そういう出来事はあったと思うけど、「生乾きのまつ毛」なんて俺見たことないかもしないし(笑)。

ー「追憶」は、中村タイチさんが編曲に入られた最初の曲ですが、いかがでしたか。

やまもと:「追憶」は、こんな曲があるんですってアコースティックギターで歌って、タイチさんに聞いてもらって編曲してもらいました。これがアレンジャーさんにお願いするってことかって感動しました。

ー連続リリース1発目の楽曲、リリースしてみていかがでしたか。

やまもと:純粋に嬉しいなって思いました。曲がアレンジされるとこうなるんだって驚きがあったから、みんなに早く聞いてほしいなって思ったし、自分がこうやって曲を出せることへの感動もあったかな。タイチさんに対してありがたいなって思う反面、 もっといい曲を書きたいなとも思いました。曲ができた時は完成した喜びもあるし、いろんな人が聞いてくれて嬉しいけど、もっといいものができるはずっていつも思う。

はじめての上京をリアルに歌った「青の鳥」

上野皓平(The Songbards)との共同制作

作曲が楽しいなって思うきっかけになったかな。

ー連続リリース2曲目の「青の鳥」は、The Songbards の上野さんと共作した楽曲ということですが、どのように曲作りが進んでいったか教えてください。

やまもと:お互い1曲ずつ作ってスタジオに集まって聴いて、上野くんが作ってきてた曲でとりあえずやってみようってなりました。俺がまずその歌のメロディーを歌ってみたり、サビの後にはこういうメロディーを足したらいいんじゃないかとか話し合いながら進めました。上野くんがそのとき歌ったサビが今のサビなんです。

やまもと:歌詞はまず、上野くんから俺に対して色んな質問があったんです。自分の実体験とか、その時の気持ちとかを上野くんに話していって、それをもとに上野くんが歌詞のモチーフを考えていったんです。それから上野くんが別の部屋に行って歌詞を書き始めて、1時間ぐらいで帰ってきたら、結構出来上がっててそれが「青の鳥」の原型でした。ほぼスタジオで一緒に作業してる間にできてスムーズだったと思います。イントロはピアノで始まるけど、それはスタジオで上野くんがパンって引いて、今のいいよねみたいに盛り上がって。本当にそういうことの連続で出来上がったと思います。

曲作りですごい悩んでたから、上野くんと曲を作ったらどうにかなるかなって希望もあってお願いしました。

ー曲作りをする前から、上野さんとは交友関係が深かったのでしょうか?

やまもと:もともと俺が上野くんのファンで、上野くんが俺の曲を聞いてくれてるのをたまたまSNSで発見して、俺がバンバンメッセージを送ったら仲良くなった(笑)。俺の初めての東京のライブがあったとき、遊ぼうって言ってくれたり最初から仲良くしてくれましたね。

ーまだ上京もしていないときですよね。

やまもと:全然してないです。そのときは、全く上京のことは考えてなくて、上野くんが「東京来たらいいのに」って渋谷の歩道橋下で言ってくれたのを覚えてます。それが上京のきっかけになったかな。そこから、「おいでよ」という俺の自主企画に誘って出てもらったり。「青の鳥」を作り始めたときは、曲作りですごい悩んでたから、上野くんと曲を作ったらどうにかなるかなって希望もあってお願いしました。なんとか今の状況を打破したいなっていう気持ちもあったかもしれない。

ー結果的に打破するきっかけになりましたか?

やまもと:作曲が楽しいなって思うきっかけになったかな。1人で曲作りするよりも 会話しながらやった方が楽しいし、上野くんとは好きな部分が似てるところもあるから、そこがやってて楽しいポイントだったかな。上野くんはすごい優しいから安心してなんでもアイデアを言える相手。ほかの人とやっててもこうはならないんじゃないかな。

ー優しい歌詞だなと思いました。やまもとさんに向けた歌詞なのではと私は解釈しましたが、やまもとさんはどう感じましたか?

やまもと:そうですね。俺の話から上野くんが想像を膨らまして書いてる部分もあるから自分が主人公みたいに感じる時がある。初めて上京したときは、人と働くのが苦手になっちゃって、そのときに勤めていたところを3日目ぐらいで休んじゃうみたいな感じで(笑)。「音楽活動もどう始めたらいいかわからない、曲もどう作ったらいいかわからない」みたいになって、どうしようもなく公園でブランコを漕いでるみたいな日々で。そんな当時のことから恋愛の話までも上野くんに全部話したからそれが盛り込まれた歌詞になったと思う。

ーミュージシャンを夢見て上京したということですか?

やまもと:ミュージシャンやりたいってのもあったし、どうしていいか分からなぎてとりあえず大学辞めて東京に行こうと思いました。でも、東京に出た後も日々をごまかしごまかしでやってて、結局それで何もうまくいかなくて。音楽ができてないからむしゃくしゃする。生活がうまくいかない。お金が稼げない。それで、結局福岡に戻ってそれからちゃんと音楽活動を始めましたね。

上野くんは絶対ポジティブな方に持っていこうとしてくれるんです。

ー当時のやまもとさんを上野さんが抱きしめてくれたような曲ですよね。

やまもと:そうですね。なんでも話せたっていうのが大きいかも。赤裸々になれたのは上野くんだからだと思います。

ー普段からよく相談をすることがありますか?

やまもと:しますね。喋ってるときは白熱してるから気づかないけど、振り返ってみると、俺ばかり喋ってたなと(笑)。俺が「なんかダメなんですよね」みたいに言ったら、上野くんは絶対ポジティブな方に持っていこうとしてくれるんです。絶対にネガティブなことは言わないんですよ。なんでこんなに優しいんだろうって思いますね。普段からの上野くんへの信頼感があるから、なんでも話せるし、なんでも話したいなって思わせてくれるそんな人です。

苦しみをポップなメロディーで歌った「旅の途中」

やまもとはるとと「旅」

どこか遠くに行きたいなって憧れはいつもあるから、「旅」っていうワードが好きなのかもしれない。

ー「旅の途中」は、どのようにできた曲なのか教えていただけますか。

やまもと:メロディは、俺がやっているバンドの「moni」のレコーディングの待ち時間に1人でギター弾いてたらできました。それから、ずっとボイスメモで眠ってた曲です。

ー旅を歌った曲が今までもあるじゃないですか。ここにきて「旅の途中」というタイトルをつけるのか!と思って。「旅」がはるとさんの音楽の中で重要なキーワードになってるのではと考えたのですがいかがですか?

やまもと:「旅の途中」ってワードが曲中には出てくる訳ではないけど、「旅の途中」っていう題名が絶対にいいと思いましたね。だから今まで歌っていた旅のことはあんまり考えてないかな。でもどこか遠いところに行きたいなって憧れはいつもあるから、「旅」っていうワードが好きなのかもしれない。

小山田壮平、カモシタサラからの言葉

自分で覚えなきゃと思ってたことじゃなくて、 時が進むにつれて大事な言葉になってきたと思う。

ー「旅の途中」の歌詞で、『地図代わりにしてる言葉』というフレーズがありますが、これは実際にやまもとさんにある言葉ですか?

やまもと:いろんな人が俺に言ってくれて、前向きになった言葉とか無意識で思い返してる言葉があると思うけど、ここでは特に(小山田)壮平くんと(カモシタ)サラちゃんがくれた言葉を歌ってるかな。壮平くんには相談をすることも多くて上京前に楽しんで音楽をやることを教えてもらったし、サラちゃんに関して言えば、くだらないことでとにかく俺は悩み続ける俺を励ましてくれます。2人にかけてもらった言葉は忘れないでおこうって思いながら暮らしてますね。この言葉たちって自分で覚えなきゃと思ってたことじゃなくて、 時が進むにつれて大事な言葉になってきたと思う。2人に言ってもらってたことがそういうことだったんだって気付きも増えてきて、今回「地図代わりにしてる言葉」って歌うことで、これからも忘れないようにという思いがあって歌詞にしました。

繰り返しに終止符を打って、次のステップに行きたいという気持ちになったかな。

ー「旅の途中」のミュージックビデオでは、初めての演技シーンもあったと思いますがいかがでしたか?

やまもと:MVを撮ってくれた(フジムラ)ヒヨリさんは、ずっと俺のMVを撮りたいって言ってくれてたから、撮影ではかなり俺のやりたいことに寄り添ってくれてたと思います。だから難しいことをお願いされたりもしませんでした。MVに一緒に出ているHIYORIちゃんも可愛くて素直でいい子だったし、とにかく楽しかったです。

ーやまもとさんは過去に「からっぽのプール」のMVも配信されていますが、だいぶ違う印象の映像になっていますよね。

やまもと:そうですね。「からっぽのプール」はどちらかというと暗い曲で、一方「旅の途中」は自分の中では明るい曲です。だからこそ歌える歌詞を意識しました。それがMVにもつながっていると思います。

ーやまもとさん自身の悩んでしまう性格や思うようにいかなかった思い出を「青の鳥」で、消化することができて、自身の中で受け入れられたのかなと思いました。だからこそポップなメロディーになったのかなと。

やまもと:そうですね。「青の鳥」が完成して、どうしようもなかった時期が歌になったから、あの時期も今となればよかったのかなって思えるようになりました。「旅の途中」に関して言えば、2、3年ぐらい頭の中で繰り返してたことが歌になったから、その繰り返しに終止符を打って、次のステップに行きたいという気持ちになったかな。

やまもとはると

2000年生まれ。福岡県出身。シンガーソングライター。
大学生時代に友人の自宅にあったギターを手に取ったことをきっかけに、弾き語りを始める。
現在、東京のライブハウスを中心に活動中。
さまざまな音楽仲間と集う自主ライブ企画「おいでよ」を不定期開催。

現在、FM福岡「Hyper Night Program GOW!!」にて月1レギュラー「やまもとはるとのなんとか成長ダイアリー」に出演中。

ライブ情報

“やまもとはると 旅の途中ツアー 2024”

〈アコースティックセット〉

9月26日(木)OPEN 19:30 / START 20:00

@ 福岡 ライブハウス秘密

ゲストアクト:八丸於冬(ハチマライザー)

〈ワンマンライブ / バンドセット〉

10月4日(金)OPEN 18:00 / START 19:00

@ 東京 原宿ストロボカフェ

チケットの購入はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です