心に潤いを与える優しさのなかにどこか寂しさが共鳴する楽曲で魅了するシンガーソングライターやまもとはると。これまでアコースティックギターの弾き語りを中心に活動してきた彼が、今回新たな一歩を踏み出した。5か月連続で楽曲をリリースした彼に、現在の想いやこれからの展望を探った。
前後編に分けたインタビュー後編の今回は、「Your Song」「エメラルド」の2曲を深掘り。
さらには、全5作を通してやまもとはるとの世界観を体現したアートワークの背後にある想い、今月に迫った自身初となるツアーへの期待を存分に語ってもらった。
(取材・文＝ツムギ、撮影＝アヤネ)
新しいアプローチで言葉を紡いだ「Your Song」
想いをストレートに歌詞に
考えすぎてない言葉たちだから自分の思ってることに近い歌詞になってるんじゃないかと思います。
ー「Your Song」は、どのようにできた曲か教えていただけますか。
やまもと：まずメロディーが先にできたけれど、締め切りに間に合わなそうで、やばい！と思いながらタイチさんのスタジオに原付で向かってるときにサビが思いついて。すぐタイチさんに聞いてもらって、「いいね！」ってなってその日のうちに完成した曲。ギリギリだった曲だけど、よかったなって思います。
やまもと：歌詞に関して言えば、「旅の途中」を書いた後に何を書こうかなって思って、考え込んでしまって。「旅の途中」から「Your Song」に繋げようとしすぎて、自分でも思ってないことまで書いてしまっていたので、今まで考えてたこと全部やめた！ってスタジオに入ったりしてました。とりあえず自分が思ったことを瞬間にメモするってことを繰り返していって、少しずつ筋書きだけ書き出して、それを見ながら歌って言葉をはめていきました。そうしたら歌ってるとどんどん言葉が当てはまるという現象が起きて、考えすぎてない言葉たちだから自分の思ってることに近い歌詞になってるんじゃないかと思います。
ー曲中のギターソロが特徴的で耳に残る曲ですよね。
やまもと：気づいてくれるのがすごい嬉しい（笑）。この曲ってすごく綺麗なメロディーだから、いわゆる普通のギターソロをつけたら、ありがちな曲になっちゃうから、自分はそこ崩したいなって思って。どういうことをしたら自分が思ってる理想に近いかなと思ったときに、思いついたのが逆再生ギターだった。面白いかもと思って、タイチさんに相談したらその場でぱっと弾いてくれて。それが形になりました。
ー発想をすぐにタイチさんが汲んでくれたんですね。
やまもと：そう！スピード感がやっぱりすごい。バンドだといろんな意見があるし、 それもそれですごい良いものを作るきっかけになると思うけど、俺が思いついて言ったことがすぐ形になる。あのスピード感が、自分としてはもう爽快だし、ありがたいと思いました。俺が歌ったことをタイチさんが汲み取ってくれて。「まさにそれです！」みたいなことがたくさんありました。
カモシタサラが作詞を手掛けた「エメラルド」
「暗闇で光るように どこまでも歌うから」
いつでも歌いたいし、いつでも聴ける曲になってくれたらいいなって思ってます。
ーカモシタサラさんは「moni」のバンドメンバーでもあり交流が深いと思いますが、彼女が「エメラルド」の作詞を手掛けたのはどのような経緯でしょうか。
やまもと：去年この曲のメロディーができたんだけど、そのときは自分はあんまり歌詞を書けないなって思ってた時期で。サラちゃんと一緒に曲作りたいなとは前からずっと思ってたから、作詞をお願いしようと思いました。
ーそれは、「旅の途中」のインタビューでお話されていた小山田壮平さんからの後押しもきっかけにありますか。
やまもと：ありますね。
ーこの歌詞は、やまもとさんのことを歌っているように聞こえたのですが、やまもとさん自身はどう解釈していますか。
やまもと：自分の中にある考えとか気持ちを書いてくれているからなのか、歌っていてグッときました。家族からも「これははるくんのこと歌ってるんじゃない？」って言われたことがあったから、俺もそうだったらいいなと思ってました。でも、違ったら残念なのであえて聞きませんでした。
やまもと：それが、この前歌詞のことを聞く機会があって。「エメラルド」をどういう曲にするかで、サラちゃんと長電話したときがあったんだけど、悩みを聞いてもらってたんです。それで自分が悩んでる姿とか、悩んでる内容が曲にかなり影響していていると聞きました。俺が歌う姿をイメージして書いてくれてたのがわかって嬉しかったですね。
ー「エメラルド」が、連続リリースの締めくくりとして、どういう意味を持つ曲になると考えていますか？
やまもと：俺はライブに出るとき、そのときの自分の精神的なものが影響して、この曲今歌いたい気持ちじゃないなって思うことがあったりするの。「エメラルド」はそれがない。いつでも歌いたいし、いつでも聴ける曲になってくれたらいいなって思ってます。自分も好きな曲だし、押し付けがましくない曲だからこれで締めくくるのがいいんじゃないかなって思います。
ーカモシタさんが歌詞を通してポジティブに導いてくれる感覚があるのでしょうか。
やまもと：そうですね。サラちゃんが書いた歌詞を歌えているってことがポジティブな気持ちになります。すごく信頼しています。
アートワークと魅せる音の風景
日常を切り取ったジャケット
歌詞の内容とリンクするものを選んだり、その写真の良さみたいなものから選んだりもしました。
ーリリースした楽曲のジャケットは、どのように作っていったのでしょうか。
やまもと：「追憶」は今回のために撮ってもらったんだけど、他の曲は（村山）莉里子ちゃんが今まで撮った写真の中から選んで、デザイナーの藤田二郎さんがジャケットに仕上げてくれました。「エメラルド」とEPのジャケットは、KOKI NOZUEさんに撮っていただきました。写真はものすごく良いし、二郎さんのデザインがすごくて、二郎さんの手にかかったら写真がジャケットになるんです。
やまもと：写真は、歌詞の内容とリンクするものを選んだり、その写真の良さみたいなものから選んだりもしました。「追憶」は曲のイメージが自分の部屋だったし、「旅の途中」は道路の写真だけど、あれは歌詞を書いてたなかで思い描いたシーンとか、思い出の場所に近いって思ったから選んだりとか。「青の鳥」はぴったりだなって思ったものを直感で選んだり。曲のテーマもそうだし、5曲のジャケットを並べたときにこういう色がほしいなという視点でも選んでいったかな。
この先に目指すものとは
作曲を新鮮な気持ちで
楽しんで音楽をやることをもうちょっと忘れずにやりたいなって思います。その気持ちは曲を聞いてる人に伝わる気がします。
ー今後やっていきたいサウンドアプローチはありますか？
やまもと：俺はこれから、タイチさんと2人でスタジオで曲作りして、今回のツアーでバンドメンバーを迎えてライブをするわけだから、レコーディングでもそういうみんなで作るみたいなことはやってみたいなって思います。別の人とやるといろんな違いがあるだろうしいい影響をもたらすかもしれないし、新鮮な気持ちでやることが楽しさに繋がると思ってます。 あとは、1発撮りとかしてみたい。生感みたいなものを出していってみたいし、いろんなバリエーションのある曲ができたらいいなって思うから、止まらずに頑張ろうと思います。
ー今まで2回上京されたじゃないですか。上京するときに思い描いてたビジョンと今はどうですか。
やまもと：元々大きいスケールを想像してミュージシャンになりたいと思ってたわけだから、そこ自体に全く変わりはないです。でも上京するときは思い描いただけで、どういう道をたどれば良いのかって分からなかったけど、今はこうやって曲をリリースしたりとか、ライブが決まって協力してくれる人が増えて、環境がものすごく大きく変わっているから、 そこで現れた目標を1個ずつ頑張っていくのが、 大きなスケールの目標に繋がっていくんじゃないかなってイメージができたかな。
ーその大きいスケールっていうのは、どういうイメージですか？
やまもと：元々「氷室京介」に憧れてさ。横浜アリーナとかさいたまスーパーアリーナとかでライブしてる映像を見て、俺もやりたいって、かっこいいなって思った。だから、そういうミュージシャンの姿をイメージしてます。
ー近い将来の目標があれば教えてください。
やまもと：精神面で楽しんで音楽をやることをもうちょっと忘れずにやりたいなって思います。もっともっと自分が納得いく曲ができればもっと楽しいと思う。ピアノで作曲してみたりとか、新鮮な気持ちでいつも作曲に向き合って、いい曲ができたりすると、自分も楽しくなるし、ライブで披露したいっていう気持ちになるし、もっとライブしたいって気持ちになる。その気持ちは曲を聞いてる人に伝わる気がします。
“やまもとはると 旅の途中ツアー 2024”が決定
今の心境とは
自分としてもすごく自信を持てるライブになるんじゃないかなっていう予感がします。
ー今月から自身初の2都市でのツアー「旅の途中ツアー」を控えていますよね。福岡公演は、中村タイチさんと2人でのアコースティックセットで、ゲストアクトには、ハチマライザーの八丸於冬さんが出演。東京公演は、中村タイチさんとパーカッショニストの松井泉さんとのバンドセットとのことですが、心境はいかがですか。
やまもと：福岡公演は、ずっと一緒にやってきたタイチさんもいろんな楽器で参加してくれます。東京公演には、パーカッションで松井泉さんが参加してくれるんだけど、この方は俺が福岡県にいた時、 ライブハウスに見に行ったりとかもしていて。そんな方がまさか参加してくれるっていうから、こんなことあっていいのかなって思うくらい嬉しいです。自分の曲を誰かが一緒に演奏してくれる環境がありがたいし嬉しい。いろんな楽器が使われることによって、より原曲に近い形で届けられたりとか、ライブならではのアレンジで届けられたりすると思うから、すごく嬉しいし、練習頑張るぞっていう気持ちになってます。
ー福岡公演にゲストアクトで出演される八丸さんとは、いままでも交流があったのでしょうか？
やまもと：1,2回ぐらい弾き語りライブで一緒になってて、楽屋で初めて話しかけられたこととかもすごい覚えてます。八丸くんの歌がすごく好きです。
ーでは最後に、ツアーを前にファンに伝えたいことはありますか。
やまもと：今回弾き語りじゃないという状態ではじめてライブをするから、自分としてもすごく自信を持てるライブになるんじゃないかなっていう予感がします。今までライブに来たことのない人にはぜひ1歩踏み出してきてほしいなって思います。 いつも聞いてくれてる人たちには、すごくありがとうって思っています。
やまもとはると
2000年生まれ。福岡県出身。シンガーソングライター。大学生時代に友人の自宅にあったギターを手に取ったことをきっかけに、弾き語りを始める。現在、東京のライブハウスを中心に活動中。さまざまな音楽仲間と集う自主ライブ企画「おいでよ」を不定期開催。
現在、FM福岡「Hyper Night Program GOW!!」にて月1レギュラー「やまもとはるとのなんとか成長ダイアリー」に出演中。
ライブ情報
“やまもとはると 旅の途中ツアー 2024”
〈アコースティックセット〉
9月26日（木）OPEN 19:30 / START 20:00
@ 福岡 ライブハウス秘密
ゲストアクト：八丸於冬（ハチマライザー）
〈ワンマンライブ / バンドセット〉
10月4日（金）OPEN 18:00 / START 19:00
@ 東京 原宿ストロボカフェ
チケットの購入はこちら
