前田裕二 イベントレポート【AGESTOCK2022 in 一橋祭】

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2022年11月20日、一橋祭にて、SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田裕二氏のトークショーが開催された。

前田氏は、早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。ニューヨーク勤務を経て、2013年に帰国。DeNAに入社後、仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げ、2015年に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。現在はSHOWROOM株式会社代表取締役社長として「SHOWROOM」事業、ならびに2020年10月にローンチしたバーティカルシアターアプリ「smash.」事業を率いる。

今回は、イベントで垣間見えた前田氏の素の姿をお届けする。

緊張した面持ちのオープニング

開演10分前には大勢の方々にお越しいただき、客席は満席状態の会場。

オープニング映像が流れ始めると観客の視線は一気にステージへ。
緊張した面持ちで登場してきたのは、本イベントのMCを務める現役東大生 神谷明采。

ゲストのSHOWROOM代表取締役社長 前田裕二氏が登場すると会場は拍手喝采。
爽やかな笑顔と優しい声で会場の観客を魅了した。

学生時代のエピソードを明かす!

1つ目のコーナーは、「前田裕二の学生時代を探れ」。
起業家である前田氏は一体どんな学生時代を送ってきたのか、箱に入った数枚の紙に書かれたトークテーマに沿って深掘りしていくというコンテンツだ。

トークテーマ1つ目は、「②自分だけが取り組んでいたと自慢できること」。
「強いて言うなら、大学の授業を毎回最前列で受けていたことかな。早く単位を取り終えて自由な時間を取っておきたかったんだよね。やりたいことにも早期に取り組めるからね。」と真面目な学生時代の様子を窺わせた。更には「学費は自分で払っていたから費用対効果を高めたかった。」と学生時代の苦労も語る。

トークテーマ2つ目は、「⑤学生時代の将来の夢」。
「僕は海外で働くこと、例えば国連で働くことを念頭に置いてフランス語を学んでいた。自分自身が恵まれていたわけではいないし、努力が正答に報われない社会に納得いかなかった。」と当時の思いを振り返った。卒業後も、英語と数学が得意科目だったことから、外資系投資銀行に進もうと決めたと語った。
この話を聞いたMCは、自身の目標である「世界銀行への就職」について語った。大切な人を救うため、自身の環境に甘えず逞しく生きるために一生懸命なMCの姿に、前田氏、そして観客共々応援の拍手が鳴り響いた。

そして、最後のトークテーマは、「①学生時代に熱中していたこと」。
「アルバイトと単位を取ることとビジュアル系バンド」という学生らしくも、個性的な回答で観客を笑いに包んだ。MCからビジュアル系バンドにこだわった理由について聞かれると、「マーケティング観点でファンを集客しやすく、金銭的に黒字にする工夫の一つ」と説明し、当時から起業家 前田氏の片鱗を見せていたことが想像できる。また、前田裕二が大切にする作詞・作曲家 秋元康氏に言われた「記憶に残る幕の内弁当はない」という言葉を紹介した。これは、どの具材も優れている幕の内弁当は印象に残りにくく、特定の食材にこだわったり、他との差別化を図ることで個性が生まれ、人々の印象に残りやすいという意味合いである。

コメンテーターの意地を発揮!

2つ目のコーナーは、「教えて!前田裕二!」。
日本テレビ系列『スッキリ』のコメンテーターとしても活躍する前田氏に、現在話題のニュースや身近な諸問題について、観客と意見交換をしながら自身の見解を解説してもらうというコンテンツだ。

最初の議題は、テレビ番組についてである。
近年、”痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー” が審議の対象となり、テレビ番組における表現の規制が進んでいる。その影響で人気番組の放送休止やバラエティーにおける出演者の発言内容も見直されている。このような規制が進むことには主に以下3点の意見が挙げられる。

⑴ 厳しいコンプライアンスが原因でウェブ動画の方が面白くなってきている

⑵ 視聴者側の反応が過剰に敏感である

⑶ テレビの内容が子供に悪影響を与えるため規制すべきである

観客の反応は、⑵の回答を選んだ人がおよそ7割程度、最も少数だったのは⑶の回答であった。

これに対し、前田氏は⑴と回答。⑴と⑵は緩和型、⑶は規制型の姿勢であるという見方を示し、「誰がお金を払い、誰がこのコンテンツを視聴するか」というスポンサーに対応した企画や番組内容を意識しなければならないというビジネスモデルを指摘した。その一方で、ネット配信事業の展開については、テレビ番組としてはハードルが高いであろう内容であっても、ユーザーに求められるコンテンツを提供している。前田氏が最近ハマっている韓国ドラマ『地獄がよんでいる』を例に挙げ、過激な描写を含むコンテンツがランキング上位に入る理由は、単純に面白いからだと答えた。これこそがネット配信の魅力であるという見方の反面、子供も簡単に視聴できてしまう状況に課題を示していた。


2つ目の議題は、紙ストローについてである。
近年、SDGsが注目され、多くの飲食点では環境に配慮した紙ストローが使用されるようになった。しかし、実際に効果はあるのかという疑問の声が挙げられているのも事実である。これに対し、主に以下3点の意見が挙げられる。

⑴ 自然環境にやさしい

⑵ 飲み物の味が落ちるから嫌い

⑶ ストローより他の容器を脱プラスチックの対象にすべきだ

観客の反応は、⑶の回答が大半で、最も少数であったのは⑵という回答であった。

これに対し、前田氏は「紙ストローは個人的に得意ではないので⑵」と回答。SDGsやエコ活動において、「我慢を前提に幸せの量を減らすのではなく、環境負荷がより軽減され、人々が幸せになれる方法を探す余地がある。消費者が見極める力を身に付けておく必要性が増していることは否めない。」と自身の見解を明らかにした。


最後の議題は、ライブの声出しについてである。
新型コロナウイルスの影響により、アーティストのライブやイベント等での声出しが制限されている。今日では徐々に規制が緩和されつつあるものの、歓声をあげることのできないイベントは未だ多い。この問題に対し、主に以下3点の意見が挙げられる。

⑴ 一緒に歌う一体感こそがライブの醍醐味である

⑵ コロナ禍による感染リスクは考慮すべきである

⑶ 楽曲に集中できることはコロナ禍だからこそ気付けた魅力だ

観客の反応は、⑴の回答を選んだ人が比較的多く、最も少数であったのは⑶の回答であった。

これに対し、前田氏は⑴を選び、「演者のパフォーマンスはファンの歓声に支えられている」と回答。本イベント前日に開催されたTGC北九州(TGC KITAKYUSYU 2022 by TOKYO GIRLS COLLRCTION)へ参加した際、観客の声出しが可能であったことを「素直に嬉しかった」と話した。そしてMCからは、マスク装着の対策をする上での科学的根拠の必要性について問われ、「日本は科学的根拠がない場合、慎重に取り組もうとする傾向がある」と話し、過去に海外アーティストのライブに参加した際のスタンスと比較した。

最後の議題を終え、前田氏は、「参加者みなさんの意見が聞けて、新鮮で嬉しい」と喜びを見せた。また、「観客やオーディエンスという表現ではなく、皆さんは参加者でありながら、一緒にコンテンツを作ってくださった点がとても良い」と伝え、鳴り止まない拍手が会場いっぱいに響いた。

名言続出?!あなたのお悩み解決してみせます!

最後のコーナーは、「前田裕二のお悩み相談室!」。
「SHOWROOM」や「smash.」、そして自身の著作「メモの魔力」を通じて、多くの人の夢を支えてきた前田氏に、一般応募から当日の参加者応募まで、それぞれのお悩みに答えてもらった。
前半部分では、事前に一般の方々から募集した質問に回答してもらった。

最初のお悩みは、将来的に新規事業立ち上げを目指す方からの「なぜライブ配信サービスを選んだのか?」という質問だ。
「事業の立ち上げ方には2パターンがある。外と中、あるいは自分の痛みから始めるか他人の痛みから始めるか。自分の中にある価値観に沿って作る事業であれば継続できるので、SHOWROOMもずっと続けていきたいと思う。外の場合は、市場性を意識した経営を行う必要がある。」と事業経営についての見解を述べた。それを踏まえ、「痛みや悩みを改善していくためにはどのように続けていけるのか」という事業への向き合い方が大切であると指摘。「自分が何を目的に事業を立ち上げるか」で良い事業が生まれるのではないかと応援の言葉を贈った。

2つ目のお悩みは、サークルの中心的立場に立つ上での悩みを抱える大学生からの「SHOWROOM代表として意識していることは何か?」という質問だ。
「僕が最近社員によく言う言葉は「CANとFAN」。例えば、上司と部下、先輩と後輩、仲間という関係性でも「CANとFAN」が必要である。「この人について行きたい」と思わせる2要素を指し、「CAN」は秀でた能力、「FAN」は人柄を表している。これらを中心に全てが人望へと繋がっていると解説した。そして、「ゴールまでの道のりは自分が、ゴールを決めるのはメンバーが。いつでも自分がゴールを決められる状態にあるというバランスを保ちながらも、常に探検しているかのようなワクワク感を与えることが、みんなについて行きたいと思わせる優秀なリーダーじゃないかな」という考えに、観客の心を動かした。


そして後半では、会場にお越しいただいた方から直接相談者を募集した。

最初の相談者からは、「人生で一番意識していることや大事にしていることは?」と質問を投げかけられた。
これに対し、「僕の人生においてのテーマは「愛」。どこからが愛で、どこからが自分の利益の為か、時間があればずっと考えている。利己に返ってくることを知っていてやることを「愛」としてカウントして良いのかな?」と相談者と意見を交わした。前田氏は、本『愛するということ』をよく読むと話し、「会社を経営すると社員の愛情深さを育ててあげたいと思う」「リーダーを育てるという仕事が多いから、利己とは何か、利他とは何か、愛とは何かを考えることが好きで、歳を重ねる毎に真剣に考える機会が増えた」と自身の思いを伝えた。そしてラストには、「愛が技術であれば、愛は無敵と言えよう。」と名言を残し、相談者へのサイン本プレゼントでは「愛に生きよう」とメッセージを添え、相談者と交流を深めた。

次の相談者からは、「前田さんは周りに対する愛が深い方だと思った」とイベントを通じての印象を聞いた。
これに対し、「自分を満たしてから他人を満たすという分断をしている訳ではなくて、他人を満たすことが自分を満たすことに繋がっている。つまり、自己効力感を増やすということ。」と話した。そして、経営者として大事なことについて「リーダーに重要なことは、ご機嫌であること。」と語る。「常に前向きで、解決できるという方向性を持った人であるべきだ。ご機嫌であるためのポイントはいくつかあるから、それを自分が理解して、ノンフローをフロー側に持っていく。」と自身の見解を述べた。この回答に対し、相談者はサイン本プレゼントに、「ご機嫌」というメッセージを求めるなど、前田氏の一言一言が観客に共感や学びを与える、心に響くものばかりであった。

会場には積極的な参加者の方が多く、それに応えるサービス精神旺盛な姿があった。

ラストは「笑顔と愛を大切に」

前田氏は「最初から最後まで参加者と関わる機会を持てて良かった」と嬉しそうな表情を見せた。

緊張した面持ちで始まった本トークショーも無事終演。イベントで残した名言の数々は、観客、そして会場内のスタッフの頭に残るものばかりだ。

全コンテンツ終了後、会場全員で写真撮影。「愛を大切に」という言葉で締めくくり、爽やかな笑顔で会場を後にした。会場は、大勢の観客からの名残惜しい拍手のなかトークショーは幕を閉じた。

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